留学記・海外での学会発表

海外学会参加報告
「American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting」
(米国 ボルチモア)
救命救急センター 修練医 村橋 志門
 2017年9月12日〜9月16日まで、米国メリーランド州ボルチモアで開催された第76回アメリカ外傷学会総会に参加させて頂きました。自分で出した演題はなかったのですが、田島先生がoral sessionに参加されるため、海外の学会を経験してはどうかという計らいを頂き、私も同行させて頂きました。
 実はアメリカ本土へ渡るのは、今回の学会が初めてでした。海外旅行は好きで、学生時代は東南アジアを中心によく旅行していました。外国で自分の拙い英語が伝わることを喜んだものでしたが、やはりネイティブの英語は聞き取るのが難しく、最初の数日間は簡単な会話にも苦労しました。また、やはりというか日本人が苦手とする発音が上手くできません。初日の食事で「Blue moon」というビールを頼もうとしたのですが、何回言っても「?」という顔をされてしまうのです。「Blue」の「L」の発音が上手くできず、「R」の発音になっていた…というよくあるオチだったのですが、中学1年生で習う英単語が発音できなかったというショックは大きく、帰国したら英会話を練習しなくては、と自信喪失してしまいました。
 学会が開かれたボルチモアは、アメリカ国歌や星条旗誕生の場所でもあり、歴史的に大きな意味を持つ都市です。天然の良港としても知られ、近年は再開発事業が進みウォーターフロント開発がなされ活況を呈しています。また私たちにとってはジョンズホプキンス大学も避けては通れない場所です。急性心内膜炎で出現する有名な徴候「Osler結節」も、同大学教授のウィリアム・オスラー博士が発見したもので、医学的な学会中に時間を見つけ、ジョンズホプキンス病院も訪れることができ、そうした医学の歴史に思いを馳せました。
 学会はもちろん全て英語で行われ、発表についていくのに精一杯かと思われたのですが、多くの発表は臨床ベースのもので、多施設研究の成果を発表するものであったため、比較的理解しやすい印象でした。しかしその規模はさすがに大きく、州単位の解析がなされていることには驚きました。最も印象深かった発表は、ICUでの治療を要した重症頭部外傷で、βブロッカーを投与された患者は死亡率が低かった、というものでした。普段の臨床の中で頭部外傷を併発した多発外傷の方とはよく出会うので、自分の施設であればどうだろう…と改めて興味を持ちました。今後は論文検索を行い、その内容をどのように臨床業務に反映させることができるかを考えつつ、日々の診療にあたりたいと感じました。 これが今回海外学会に参加して最も自分の中で変わったと思う点でした。
 今後はこの学会参加の経験を活かし、日常診療の中でリサーチマインドを養っていきたいと思います。
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting①
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting②
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting③