長崎大学病院
診療内容と実績
 
■診療内容と実績(患者さん向け)
 

頭頸部外科班

(1)頭頸部外科とは
頭頸部外科とは頭部・頸部を対象とした外科のことです。わかりやすく言いますと脳、眼球そのものから発生する疾患以外すべてを対象とし、手術を中心として治療に当たる外科領域となります。頭頸部外科の中心となる領域が頭頸部がん治療です。
当科ではこれまでの治療成績より手術を中心としたがん治療を行っています。 頭頸部領域は咀嚼、嚥下、発声、構音など重要な機能を持っています。 可能な限り機能を温存する手術、失われた機能を改善させる再建術を開発、導入しています。
(2)告知について
当科では診断がついた時点でご本人、ご家族に告知することにしています。 それは、ご自身のがんがどのようながんでどの程度の進行度であるのか、 これから行わなければならない治療にはどのような種類がありどの程度の根治率と合併症があるのかをご理解していただくためです。 最終的にはご本人、ご家族に治療法を決めていただくことになるのですができるだけ詳細な情報を共有するため最終的には文書形式で告知を行っています。 このことによりこれから行う「がん治療」という共同作業が円滑にいくものと思っています。
(3)頭頸部がんの種類
頭頸部がんは主に以下のように発生部位別に分類されます。頭頸部領域は非常に複雑な構造、機能を持っていてがんのできる部位がわずかにずれる、あ るいは範囲が広がることによりがんに対する治療方法、治療効果、機能障害の程度が大きく違うため、正確に分類することが重要です。
1) 聴器がん
2) 鼻・副鼻腔がん
3) 口腔がん
4) 上咽頭がん
5) 中咽頭がん
6) 下咽頭がん
7) 喉頭がん
8) 唾液腺がん
9) 甲状腺がん
10) 頸部がん
(4)当科における頭頸部がん治療
頭頸部がん治療は根治治療(完全にがんを治す)方法として手術、放射線、化学療法(抗がん剤)が用いられます。他に免疫療法、遺伝子療法などがありますがこれらはそれのみでは根治は期待できません。当科におけるがん治療の方法と特徴について述べます。
a) 手術療法: がん治療の基本的治療法です。体の一部にできた悪い部分を切除しがんの部分を体外に完全に排除することを目的としま す。頭頸部では特に言葉を発する発声機能、言葉を作る構音機能、食物を小さくする咀嚼機能、食物を飲み込む嚥下機能などの重要な機能があり切除が大きくな ればそれに比例して機能低下をきたしてきます。当科では形成外科、再建班と共同で失われた機能を回復するために即時再建を積極的に行っていて、症例数は年 々増加しています。2000年以降は年間30〜40例に達しています。さらに治癒率を下げない喉頭温存手術も積極的に行っています。再建手術の場合、術後 合併症、再建組織の生着が問題となりますが当科では集中治療室で数日間の沈静期間を設けることにより合併症の軽減を行っています。
b) 放射線療法: 放射線は簡単に言えば原子爆弾の成分と同じです。つまりある一定の線量では悪性細胞を破壊し正常細胞を残すことができ ますが限界を超えると正常細胞まで破壊してしまいます。ですから適応となるのは早期がんで大きさの小さながん、放射線感受性の高いがんに限定されます。ま た、最近では抗がん剤との併用により高い抗腫瘍効果を示すことがわかってきましたので副作用に注意しながら多数の症例で用いられるようになってきました。 当科では基本的に早期喉頭がんに対し機能温存を目的として放射線治療を行っています。さらに、術後再発予防での放射線療法、進行がんで切除不能例に対して 放射線と抗がん剤の併用療法を行っています。
c) 化学療法: 抗がん剤を経口、点滴、もしくは動脈内に投与することによりがん組織を死滅させる方法です。抗がん剤単独では治療効 果が少ないため上記で述べたように放射線と併用することにより高い治療効果が期待されます。しかしながら副作用も増強するため年齢、合併症の有無により使 用されます。最近では再発予防として経口抗がん剤が補助療法として用いられたり、がん組織を栄養している動脈に超選択的に抗がん剤を注入することにより機 能を温存した治癒を可能にしてきています。
(5)各部位のがんの特徴と治療
1) 聴器がん: 外耳、外耳道、中耳から発生するがんです。多くは耳をいじる習慣により難治性の皮膚炎を生じ、徐々に炎症部分ががん化 することにより起こります。治療は側頭骨部分切除もしくは亜全摘が行われます。放射線が行われることがありますが治癒率はそれ程高くありません。当科では 積極的に側頭骨部分切除を行い、良好な治療結果を得ています。
2) 鼻・副鼻腔がん: 鼻の中(固有鼻腔)と頭蓋骨の空洞部分(副鼻腔)から発生するがんです。鼻腔がんは頑固な鼻出血、一側の鼻閉が特徴で 悪性細胞の組織型も多彩です。副鼻腔がんは骨組織の中で発育するため顔面のしびれ感、腫脹が出たときには進行したがんであることが多いのが特徴です。放射 線感受性は高いのですが進行がんが多く手術が必要となります。当科では顔面形態の再建を併用した拡大切除を行っています。また、頭蓋底進展例には脳神経外 科と共同で頭蓋底手術も積極的に行っています。
3) 口腔がん: 歯肉、頬粘膜、舌、口腔底、硬口蓋から発生するがんです。口腔内は口内炎、色素異常など非常に多彩な粘膜変化がきたし やすく早期にがんを判別することが重要です。小さながんは放射線で治癒することも多いのですががんの発育が早く、周囲に進展しやすいため手術になることが 多いがんです。当科ででは早期がんには縮小手術で舌部分切除を進行例には拡大切除と即時再建で治癒率の向上と術後の機能改善を行っています。
4) 上咽頭がん: 軟口蓋の裏、鼻腔後方の粘膜から発生するがんです。鼻づまり、鼻血、頸部リンパ節腫大で見つかることが多く進行例が多 いのが特徴です。解剖学的に脳、脳神経が近接していて手術不可能なことが多く放射線により治療されます。当科では放射線科と共同で放射線―抗がん剤併用療 法で治療に当たっています。
5) 中咽頭がん: 軟口蓋、扁桃腺、舌根(舌の奥)、後壁に発生するがんです。場所ごとに治療に対する反応が違い軟口蓋、扁桃腺は放射線 の感受性が高いのに対し舌根、後壁は感受性が低く手術が中心となります。咽頭は嚥下、構音機能に重要な役割を持っていますので再建手術を併用することが多 くなってきます。
6) 下咽頭がん: 喉頭の後方、食道入口部にできるがんです。初期の頃は自覚症状がでにくく、頸部リンパ節転移を契機として見つかること も多いがんです。また、自覚症状として嚥下障害や痛みがでたときには進行がんであることが多いのも特徴といえるでしょう。頭頸部領域では最も難治性のがん のひとつです。治療としては食道再建を伴った咽頭・喉頭・頸部食道摘出術が一般的ですが音声機能を喪失してしまうため最近では限局したがんの場合は喉頭機 能を温存する手術も数多く試されています。
7) 喉頭がん: 頭頸部で最も多いがんの一つで喫煙との関係が示唆されています。声帯を中心に声門上部がん、声門下がんの3種類に分類 されます。声門がんは嗄声(声がれ)を生じやすく早期に見つかることが多く、治療は放射線を行うことが多いのですが放射線後再発、あるいは進行した場合に は喉頭を摘出しなければなりません。当科ではがんの範囲が限局している場合は積極的に喉頭機能を残す喉頭部分切除を行っています。声門上部がん、声門下が んは進行例が多く、この場合は手術治療が中心となります。
8) 唾液腺がん: 主な唾液腺には耳の下にある耳下腺とあごの下にある顎下腺、舌下腺があります。また、口腔粘膜には多くの小唾液腺が存 在しこれらから発生するがんの総称です。がんの組織型は多彩で悪性度もそれぞれ違います。腫瘤や痛みで自覚されることが多いのですが特に耳下腺では内部を 顔面神経が走行するため顔面神経麻痺で見つかることもあります。治療は放射線、抗がん剤は無効なことが多く、手術治療が中心となります。術前に顔面神経麻 痺がなくとも切除で神経を犠牲にしなければならないこともあり当科では神経移植を含めた動的再建、形態を保持する静的再建を行っています。
9) 甲状腺がん: 甲状腺は喉頭直下の気管に喋々が羽を広げた形で存在し甲状腺ホルモンを分泌しています。良性腫瘍が圧倒的に多いのです が悪性腫瘍も決して少なくありません。悪性腫瘍では成長速度の緩やかな乳頭がんが多数を占めますが稀に超悪性度の高い未分化がんも存在します。治療として は手術が中心となります。気管、喉頭に進展すること多いのですが当科では可能な限り喉頭機能を残した術式を行っています。特に気管進展例では気管再建を2 期的に行うことで良好な結果をもたらしています。
10) 頸部がん: 頸部原発のがん(鰓弓由来のがんなど)や原発不明がんの頸部リンパ節転移などです。手術治療が中心で術後に放射線治療を行うこともあります。

(6)頭頸部外科班の診療・治療実績
  平成21年 平成22年 平成23年 平成24 平成25 平成26
喉頭癌手術
( )内は喉頭(声帯)温存
7(3) 11(6) 10(1) 8(1) 9(2) 9(2)
下咽頭癌手術
( )内は喉頭(声帯)温存
10(0) 7(1) 9(1) 8(2) 9(1) 7(1)
中咽頭癌手術 7 15 10 6 6 7
口腔癌(舌癌歯肉癌など) 20 17 10 16 16 11
上顎癌 4 2 2 3 3 2
頭蓋底外科手術
(頭蓋底に浸潤した上顎癌や聴器癌を含む)
3 8 3 2 0 2
甲状腺癌 20 25 11 9 9 13
耳下腺癌 4 5 4 4 4 2


このページを閉じる

since 2006.7.11