設立の背景

 色素性乾皮症やコケイン症候群などのゲノム不安定性疾患は、比較的稀な疾患であることに加え、原因であるDNA損傷修復異常を検査する全国的な体制がありません。長崎大学では、がん・ゲノム不安定性研究拠点を中心にゲノム不安定性疾患の患者検体を全国から収集し、ウイルス相補性試験やゲノム解析を行ってきましたが、ゲノム不安定疾患の原因遺伝子がまだ研究段階であることから、これらの検査は臨床検査として位置づけられていません。厚生労働省は2012年3月の診療報酬改定で遺伝性疾患の遺伝子検査の保険適用を大幅に拡大しましたが、日本衛生検査所協会の2015年の調査報告書によると、拡大した対象疾患のほとんどは検査を請け負う検査会社が一つもありません。検査をしたくても、その受け皿が容易に見つからないのが本邦の現状です。換言すれば、ゲノム不安定性疾患を検査診断するための全国的な拠点が求められています。その拠点を作るため、長崎大学病院にゲノム不安定性疾患診断室を設立しました。