新型コロナウイルス感染症の既感染者と未感染者に
 おけるワクチン接種前後の各種抗体価の推移について
 中間報告(2021年6月16日プレスリリース)の続報

 長崎大学病院検査部栁原克紀教授らの研究グループは、長崎大学病院新型コロナウイルス検査センターにおいて、新型コロナウイルス感染症に感染したことがある方(既感染者)とこれまで感染したことがない方(未感染者)を対象に、新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン:ファイザー社)接種前後の血液中の抗体価を測定する研究を実施しています。測定には臨床検査室で測定することが可能な方法・機器を用いています(CLIA 法・Alinity、Abbott Laboratories)。今回、2021年6月16日にプレスリリースしました中間報告の続報をお知らせします。

研究の結果

 本研究では、既感染者49人と未感染者113人の方々のご協力をいただき、ワクチン接種前後における血液中の抗体価を測定しています。そのうち、10月30日までの測定データを解析した結果、ワクチン接種後の抗体価は徐々に低下傾向がみられ、未感染者においては既感染者よりも低下の幅が大きいことがわかりました。

図.ワクチン接種前後のスパイク他パクに対するIgG抗体の推移
(グラフは平均値±95%信頼区間を表示)

 海外での研究結果により、ワクチン接種後数ヶ月経過してから、感染予防効果が低下してくることが報告されています。今回の我々の研究により、ワクチン接種後数ヶ月で徐々に抗体価が低下することを明らかにすることができ、抗体価と感染予防効果の関連性が示唆されるものと考えられます。今後、3回目のワクチン接種によりどのように抗体価が推移するかについても観察し、明らかにしていく方針です。

※抗体価
ウイルスなどの「抗原」に対して、リンパ球が生産した「抗体」の量がどれくらいか、という指標。
数値が高い方が、ウイルス(抗原)の細胞への感染を防ぐ作用が強いと考えられる。

※参考文献
Thomas SJ et al., N Engl J Med. 2021. (DOI: 10.1056/NEJMoa2110345)

研究の背景

 mRNAワクチンは新型コロナウイルスのスパイクタンパクに対する抗体を誘導しますが、ヌクレオカプシドタンパクなどの他の構成成分に対する抗体は誘導されません。一方、既感染者の方は、スパイクタンパクとヌクレオカプシドタンパクの両者に対する抗体を保有しています。そのような方は、ワクチン接種によりスパイクタンパクに対する抗体がさらに増強されると考えられています(図3)。スパイクタンパクに対するIgG抗体は、中和抗体(ウイルスの細胞への侵入を防ぐ抗体)と相関することが明らかにされています。

図3.新型コロナウイルスの構造タンパク

(共同研究)
本研究はAMEDおよびアボットジャパン合同会社との共同研究契約に基づき実施されました

[記事:総務課(広報・評価)]