新型コロナウイルス感染症の既感染者と未感染者に
 おけるワクチン接種前後の各種抗体価の推移について
 続報

 長崎大学病院検査部栁原克紀教授らの研究グループは、長崎大学病院新型コロナウイルス検査センターにおいて、新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン:ファイザー社)接種前後の血液中の抗体価(※)を測定する研究を実施しています。測定には臨床検査室で測定することが可能な方法・機器を用いています(CLIA 法・Alinity、Abbott Laboratories)。今回、3回目のワクチン接種後の抗体価について報告します。

研究の結果

 今回、COVID-19未感染者の方50人を対象に、3回目接種前後における血液中の抗体価を測定し、比較しました(ファイザー社ワクチン)。初回接種36週後に951AU/mLまで低下していた抗体価は、3回目接種の1週間後に24,529AU/mL(25.8倍)まで上昇がみられました(図1)

図1.ワクチン接種前後のスパイクタンパクに対するIgG抗体の推移
(グラフは平均値±95%信頼区間を表示)

 現在、オミクロン株の流行に対し、3回目接種の有効性が報告されています。3回目接種により抗体価が上昇することにより、オミクロン株に対する感染・重症化予防効果が得られると考えられます。今後も引き続き、抗体価がどのように推移していくかについて観察を継続し、明らかにしていく方針です。

※抗体価
ウイルスなどの「抗原」に対して、リンパ球が生産した「抗体」の量がどれくらいか、という指標。
数値が高い方が、ウイルス(抗原)の細胞への感染を防ぐ作用が強いと考えられる。

研究の背景

 mRNAワクチンは新型コロナウイルスのスパイクタンパクに対する抗体を誘導しますが、ヌクレオカプシドタンパクなどの他の構成成分に対する抗体は誘導されません。一方、既感染者の方は、スパイクタンパクとヌクレオカプシドタンパクの両者に対する抗体を保有しています。そのような方は、ワクチン接種によりスパイクタンパクに対する抗体がさらに増強されると考えられています(図2)。スパイクタンパクに対するIgG抗体は、中和抗体(ウイルスの細胞への侵入を防ぐ抗体)と相関することが明らかにされています。

図2.新型コロナウイルスの構造タンパク

(共同研究)
本研究はAMEDおよびアボットジャパン合同会社との共同研究契約に基づき実施されました

[記事:総務課(広報・評価)]