患者さんへ

治験 ちけん ってなに?
ここでは治験に関する疑問にお答えする形で、治験とは何か、どういうものなのかを説明していきたいと思います。
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 1. 治験全般について
Q 治験って何ですか?

A 「薬の候補」を日本で薬として認めてもらうために行う臨床試験のことです。
   新しい薬が医療の現場で多くの患者さんに使えるようになるためには、事前に十分な効き目と副作用を確かめる事が必要です。この「薬の候補」の有効性と安全性を確認し、国に薬として認めてもらうための、人を対象とした臨床試験のことを「治験」と呼びます。
 現在使用されているお薬も、この「治験」の過程のなかで多くの方の協力を経て生まれてきたものなのです。
Q 先生から'治験'の話を受けました。参加したほうがいいですか?

A 説明をよくお聞きになり、治験の内容を十分にご理解の上お決め下さい。ご家族などとよくご相談されることをお勧めします。
   治験への参加は決して強制的なものではありません。治験への参加決定は、内容を十分にご理解頂いた後でお決め下さい。参加をするかしないかは本人の自由意思で決めることができます。
 治験への参加は、治験担当医師や治験コーディネーターから、参加する治験の目的、方法、治験に参加する期間、治験薬の性質、用法・用量、治験期間中の注意点などの説明が詳しく行われます。不明な点がある場合は、治験担当医師や治験コーディネーターから納得のいくまで繰り返し説明を受けることができます。
 参加への参加を決められた場合には、ご本人に参加同意書への署名をして頂き、治験が開始されます。途中で同意を撤回しても不利益は受けません。
Q 治験には誰でも参加できますか?

A 症状や検査値など、個々に定めた基準を満たした方のみ参加可能です。
   個々の治験には症状、現在使用中の薬、検査値、既往歴、合併症などの一定の基準があります。これは治験薬の効果や副作用をできるだけ正確に評価するためです。
例えば気管支喘息薬の治験では、軽症の方のみ参加可能なものもあれば、重症の方が参加出来るものもあります。院内の掲示板などには治験対象となる疾患名を表示していますが、その疾患をお持ちの全ての方が希望の治験に参加して頂けるわけではありません。
 ご自分または、ご家族などが治験参加の基準を満たしているかどうかは、詳しくお話をうかがってみないと分かりません。興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。
Q 治験の期間はどれくらいですか?

A 治験によって、参加期間は異なります。
   治験の期間は参加される治験によって様々です。治験の期間とは治験薬を使用する期間以外にも使用前の前観察期、使用後の後観察期なども含まれます。数日で終了するものから、数年に渡るものもあります。また、治験によっては、入院してから開始されるものもあります。
 スケジュールはあらかじめ決まっていますので、参加するときに参加期間や来院予定日などを確認することが出来ます。
Q 治験に参加するとどんなメリットがありますか?

A 以下のようなことが考えられます。
 
  • まだ治療薬のない疾患に対する治験であれば、他ではできない治療を受ける事ができます。
  • 今ある治療薬と比べてより効果があり、少ない副作用などが期待できます。
  • 予想できない副作用もあるので通常の治療より詳しい検査や診察を行い、よりきめ細かな治療を受けることができます。
  • 治験薬を服用していただいている間の治験薬、一部の薬代や検査の費用は依頼者(製薬会社)が負担します。
  • 通常の診察に比べ来院回数が増える場合があります。そのため交通費などの負担軽減費が支払われます。
  • 同じ病気に悩む多くの患者さんに役に立つという社会貢献ができます。
Q 治験に参加する場合のデメリットは何ですか?

A 以下のようなことが考えられます。
 
  • 説明された以外の未知の副作用が発現する可能性があります。
  • 国に承認されていない薬を飲んでいるという不安を持つ方もいらっしゃいます。
  • 治験によっては、プラセボ(成分の入っていない薬剤)を服用して頂く事があります。
  • 薬の効果や安全性の確認のために採血や検査、来院回数が増える場合があります。
  • 薬の服薬状況や体の状態の記録をお願いすることがあります。
  • 飲んでいいお薬や運動、食事などに制限がある場合があります。
  • 定期的に治験を行っている病院に通う必要があります。
Q 治験にはどんなルールがありますか?

A 患者さんの権利や安全を守るために、国の法律で厳しいルール「医薬品の臨床試験の実施の基準」(Good Clinical Practice:GCP)が定められています。
   治験は、「薬の候補」の有効性や安全性を詳しく調べるため、通常の診療よりも検査の項目や回数が増えるなど、研究的な側面をもっているので、ルールを守って行われます。また、医療機関で治験を行う場合は、「治験審査委員会」と呼ばれる委員会で、治験を実施することが倫理的、科学的、医学的および薬学的に妥当かどうか検討され、承認されなければなりません。この治験審査委員会には、医学・歯学・薬学などの専門家だけでなく、専門外の人や病院と利害関係のない人も必ず参加します。治験審査委員会の手順書、委員名簿および会議の記録の概要は、当院のホームページにて公表しています。詳しくは、臨床研究センターまでお問い合わせください。
Q 治験の情報はどこで得られますか?

A 以下のところで見ることができます。
   長崎大学病院では1階の臨床研究センターの掲示板に現在募集中の治験を掲示しています。
当ホームページにも同じ内容のページがあります。
 また厚生労働省にも治験についてのホームページがあります。
一部の製薬会社ではホームページ、新聞広告、テレビCMなどで随時募集を行っています。
 日本製薬工業協会
 2. 治験参加中の治療と安全性について
Q 治験での治療と普段の治療との違いは何ですか?

A 治験は治療の選択肢の1つだとお考えください。
   治験では治験薬の薬効や安全性を正確に評価するため、病状などの一定の基準を満たした患者さんに治験のお話をしています。また、治験は普段の治療に比べて試験的な側面を持っています。そのため、採血や採尿の回数が増える場合やレントゲン、心電図などの検査をお願いする場合があります。
 一般的に治験期間中の検査費用は製薬会社負担となるため、頻回の検査による、より細やかな治療を受ける事ができます。
 治験は新しい治療法を見つけるための段階の1つです。通常の治療と比べ、効果が少ない場合もあり、患者さんによって良い点、悪い点に違いがあると思います。治療の選択肢の1つだと考えて頂ければ良いと思います。
Q 治験のお薬と普段のお薬との違いは何ですか?

A 治験薬は言わば生まれる前の「薬の候補」。使用するには多くのルールがあります。
   治験で使用されるお薬は日本で承認される前のお薬です。有効性・安全性については、人への投与経験が少ないため、未知の副作用を秘め、本当に効くのかまだ十分に分かっていない状態といえます。
 治験でこういった「薬の候補」を使用する場合は、安全性を重視しながら有効性を確認する必要があるため、決められたスケジュールに沿って、採血などの検査を頻回に行います。
 また、治験期間中に起こった健康上の問題点については、治験薬との関連性の有無にかかわらず製薬会社に報告され、新たに分かった重要な情報はその都度、患者さんにお知らせいたします。
Q 治験薬は安全ですか?

A 未知の副作用が起こる可能性は否定できませんが、
副作用が発生した場合、迅速な対応がとれる体制が整っています。
   治験では副作用については最大限の注意が払われており、参加された方の安全性を確保することが最優先になっています。治験実施にあたっては厳しい制度や規制が設けられています。治験は副作用が起きたときに迅速に対応のできる医療機関でしか実施できません。
 万が一副作用が起きたとき、また病状が悪化したときなどは、治験を中止するなど速やかに適切な治療が受けられます。
 治験中に発生した病気やけがは、治験薬と関係がない場合でも報告され、まとめられます。その後、治験薬との因果関係を改めて調査し、結果は同じ治験薬を使っている患者さんに医療機関を通じて随時報告されます。
Q 副作用が出た場合はどうするのですか?

A まずは担当医、臨床研究センターにご連絡ください。
また、病院に行く場合はなるべく当院にお越しください。
   治験で用いるお薬は多くの患者さんで使用された経験がありません。未知の副作用が発生する可能性は残念ながら否定できません。
 調子が悪いな、と思われたらまずは当院までご連絡ください。お話を伺い、医師の診察を受けて頂くなどの対応を検討いたします。
 また、診察を受ける場合は緊急の場合を除き、なるべく当院までお越し下さい。また他院にかかられた場合は、治験のお薬を使用中であることをお伝え下さい。後ほど落ち着かれてから当院までご連絡下さい。
 治験薬との因果関係が否定できない副作用については、製薬会社が医療費等を補償します。ただし、治験薬の種類によっては、補償の対象の範囲が異なる場合もあります。詳しくはお尋ねください。
Q 治験に一度参加したら途中でやめられないのですか?

A 参加を止めることはいつでも可能です。これは患者さんの権利です。
   治験参加の同意書に署名して頂いた後でも、お気持ちを伝えて頂ければ、いつでも治験参加を途中で止めることができます。なお、中止後は、安全性の確認のための検査をして頂く場合がありますのでご了承ください。また、急にお薬の使用を止めると害が起きると考えられる場合は、患者さんに許可を頂きしばらく使用をお願いする場合があります。中止決定後に中止の理由についてお尋ねする場合があります。答えたくない場合はお答えを拒否されてもかまいません。また、反対に患者さんの体調が悪くなった、治療効果が見られないなど、治験の継続が難しくなった場合は、こちらから治験を中止させて頂く場合もあります。
Q 治験を途中で止めたらどうなるのですか?

A 通常受けていただく治療が選択できます。
   患者さんご自身の意思などで治験を中止した場合は有効性と安全性の確認のための検査を行い、その時の病状に応じた適切な治療を継続する事が出来ます。その場合、かかりつけ医師が治験担当医師ではない場合はかかりつけ医師からの診察を再開することも可能です。また、薬による副作用はまれに少し期間をおいて現れるものもあるため、かかりつけ医師にも治験に参加していたことを知らせておく必要があります。治験が終了する前に治験担当医などにご相談ください。
 3. プライバシーについて
Q 個人情報が漏れることはありませんか?

A 個人やその情報は人権や安全性を守るルールにより守られています。
製薬会社などにも個人が特定できる情報は流れません。
   治験中、治験に参加されている方の人権や安全性への配慮はGCP※という省令で厳格に定められています。
 治験参加後はカルテや検査データなどの資料等は、製薬会社の治験関係者、治験審査委員会、厚生労働省などのごく限られた人のみの目に触れることになります。しかしその場合も名前や住所などの個人情報は一切分からないよう保護されています。
※GCP (Good Clinical Practice):医薬品の臨床試験の実施の基準
Q 治験期間中に行った検査結果などはどうするのですか?

A 病状の把握、治験薬の薬効判定などに使用されます。
   検査の結果は治験を依頼した製薬会社に大切なデータとして報告されますが、名前や住所などの個人情報は一切分からない形で報告されます。
 もちろん治験に参加されたご本人にも検査結果をお知らせし、現在の病気の状況や治療効果をご説明します。
 4.治験参加中の日常生活について
Q 治験薬を使う時の注意点はありますか?

A 服用方法など、事前説明の内容を守るようにしてください。
   患者さんの症状の経過や服薬状況を正確に把握するため、服薬日記の記入やお薬の空シートの保管をお願いすることがあります。また治験薬が服用出来なかったり他の薬剤を使用した場合はその日時をお伝え頂きますようにお願いします。これらの事項や服用方法など、守って頂きたい・注意して頂きたい事項の説明を事前に行っています。不明な点があれば、担当医師や治験コーディネーター(CRC)に確認してください。
Q いつも通りの生活は出来ますか?

A 多くの場合、通常通りの生活が可能です。
定期的な来院や運動・喫煙などの制限をお願いする場合もあります。
   多くの場合大きな制限なく通常通りの生活を送って頂けますが、上記質問の注意点や下記のことをお願いする場合があります。治験期間中は診察や検査のために定期的に通院していただく事になるため、仕事などの都合を調整していただく場合があるかもしれません。治験によっては入院による参加をお願いする場合もあります。
 また、食事の一部、お酒、運動や喫煙の制限をお願いする場合もありますが、ほとんどの場合が通常どおり生活できます。これらの注意点は治験の内容によって異なります。事前に担当医師や治験コーディネーター(CRC)にご確認ください。
Q 今まで飲んでいた薬を飲み続けていいですか?

A 使用中の薬や健康食品などは、治験へ参加するときに担当医師や治験コーディネーター(CRC)にご確認ください。
 

 他の病院で処方される薬や市販の薬の一部には、治験薬と併用することで治験薬の作用を強めたり弱めたりするため使用を中止していただく場合があります。
また治験薬と同じような薬効を持つ薬については、治験薬の効き目を正しく評価できない場合があるため、使用を中止して頂く場合があります。
 また一部の健康食品や食品には治験薬の効き目を変化させるものがありますので、治験に参加されるときに治験医師や治験コーディネーター(CRC)に確認して下さい。

Q 治験に参加していることを他の人に話してもいいですか?

A お話していただいて大丈夫です。
   患者さん自身が治験に参加している事をお話されることについて、特に制限はありません。
 治験に参加していることを聞いた方の中には、驚かれたり心配される方もいらっしゃるかもしれません。職場や仲のよい友人など、治験の話をしておいた方がよいと思われる方には、事前にお話をされておくのもよいかもしれません。
 5.その他
Q 治験に参加すると医療費負担はどう変わりますか?

A 検査費用や一部のお薬の費用は製薬会社負担になります。
   治験薬の使用期間中は治験薬はもちろん、すべての検査・画像診断費用、治験薬と同じような効果を持つ薬(同種同効薬)の費用は治験を実施する製薬会社の負担になります。初診料と再診料、治験の対象疾患と関連のないお薬代などはご負担いただく事になります。
 また、外来受診の回数が増えることがあるため、交通費の負担軽減のための費用が支払われます。
Q 治験終了後も引き続き治験薬を使うことが出来ますか?

A 基本的には使うことは出来ません。別に長期使用の治験が設けてある場合、改めて参加していただくことで引き続き治験薬を使うことが可能となることもあります。
   基本的には予め決められたスケジュール以外で治験薬を使って頂くことは出来ません。治験は事前に内容が審査された計画書に沿って行われますが、治験の実施方法について定めた省令(GCP)により、計画書に沿わない治験薬の使用法は認められていません。
 ただし、治験薬によっては長期使用した場合の有効性や安全性を確認するスケジュールを別に設けている場合もあります。その場合は長期使用の治験に改めて参加頂くことで治験薬の使用を続けることが可能になります。担当医師や治験コーディネーター(CRC)にご相談下さい。
Q 治験期間が終わった後の治療はどうなるのですか?

A 必要に応じて通常の治療を継続可能です。
 

 治験は治験薬の使用を終えた後、有効性と安全性の確認のための検査を行い終了となります。終了後は必要に応じ通常の治療を継続することになります。その場合、かかりつけ医師が治験担当医ではない場合はかかりつけ医師からの診察を再開することも可能です。治験薬による副作用はまれに少し期間をおいて現れるものもあるため、かかりつけ医師にも治験に参加していたことを知らせておく必要があります。治験が終了する前に治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)などにご相談ください。