医療情報とは

 医療情報の分類は、簡単ではありませんが、一つの見方としてはどのような場面(サイト)で医療情報を活用するのかということです。一つの施設内で活用すること、広域で活用することです。一つの施設とは、診療所、病院、保健所、市役所、県庁、厚生労働省とありますが、主な目的は患者さんの病気の治療、健康維持、健康増進です。
 
 長崎大学病院でも、患者さん一人一人の疾患の治療を目的(患者情報の1次活用)としていますが、保険診療機関であるため、保険診療上必要とされる活用、例えば診療会計、レセプト請求などです。20年ほど前から、オーダエントリ(発生源入力)システムが導入され、その発展形として電子カルテシステムが10年ほど前から実運用開始されています。電子カルテシステムの最終的な目標は、患者情報の2次活用にあります。2次活用とは、患者さんの診療への活用という側面を除く、ほぼ全ての側面、例えば病院の経営支援、医学研究支援、保健行政支援、地域医療連携支援など多岐にわたります。
 
 長崎大学病院医療情報部は、患者さん中心の医療を支えるためのIT環境の整備、安全な医療を支える病院情報システム運用支援、病院経営支援のための環境整備、あじさいネットなどの地医療連携への支援、その他にも近年特にクローズアップされつつある情報セキュリティ対策支援など多くの役割を、院内の適切な関係者との多職種連携により推進しています。

長崎大学病院 医療情報部の遍歴

 まず初めに、国立大学病院に医療情報部がおかれた経緯から紹介します。全国42の国立大学病院に1980年代(正確ではありませんが)には、患者さんの会計処理や、保険請求処理のための医事会計システム(当初は汎用機と呼ばれる大型計算機システムが導入されていた)が普及し、その次の段階として各部門システム(検査部門システム、薬剤部門システム、放射線部門システム)が徐々に導入されてきました。この医事会計システムと部門システムを繋ぐシステムの構築と、病院全体のシステム設計を主導する立場の部門が必要であるという検討が行われ、まず、千葉大学医学部附属病院に医療情報部の設置が当時の文部省予算として認められました。(1980年頃)その後、東京大学、京都大学など、次々と医療情報部が正式に認められてきました。
 
 長崎大学医学部附属病院(現在は、法人化後、長崎大学病院となっています)にも、1990年代後半に医療情報部が認められました。医療情報部開始当時は、形成外科から、山野辺裕二先生が医療情報部に移籍されて、教員としては孤軍奮闘、事務方の方々と連携し、システムの管理をされていました。2001年5月に新教授として千葉大学から本多正幸教授が赴任され、教員2名体制で、NEC製の総合病院情報システムの運用が始まりました。そのころは医学部病院と歯学部病院に体制が分かれており、システムも個別のシステムをそれぞれに管理と運用を行っていました。予算的にも一括申請した金額をシステムの規模で案分して管理していました。患者IDも別々の体系で、同じ患者さんでも両病院に罹っている場合は患者カードを2枚持っていました。医事会計上も別々の病院として運用していました。
 
 その後、システム更新を行い、オーダリングシステム全盛期に入っていきました。伝票を無くしてIT化しすることにより、システムの効率化を図り、患者さんの待ち時間短縮を目指して日々努力していきました。また、2003年医学部病院と歯学部病院との統合が行われ、名称も「医学部・歯学部附属病院」となり、患者番号の統一(現実には医学部病院のID体系に歯学部病院のIDをマージする形でした)が行われました。翌2004年には、国立大学法人法により、国立大学法人長崎大学が誕生しました。5年後の2009年には「医学部・歯学部附属病院」が「大学病院」に改組され、病院組織に対する大学からの直轄化、医学部からの分離(実際には各種連携は残されたままです)が行われました。
 
 人的には大きな変動がありました。山野辺先生がアメリカへの海外留学を1年半経験され、その後東京の成育医療センターに希望で異動されました。後任としては、以前より大村市の長崎医療センターでシステムの管理と地域医療連携である「あじさいネット」の発展に貢献されていた、松本武浩先生が副部長(准教授)として赴任されました。
 
 システムとしては、その前年である2008年に新病棟の新築を契機として、電子カルテシステムのフル稼働を目指して更新が行われました。稼働当初は、歯科系システムの電子カルテ化を行い、半年後に医科系システムの電子カルテ化を行いました。2009年からは地域医療連携システムである「あじさいネット」に参画しました。この年からあじさいネットに参画する情報提供病院が徐々に増えていきました。現在では、あじさいネットは日本全体でみてもその規模や内容から見ても最も充実した成功モデルの一つであると評価されています。本院の総合病院情報システムとしては、2015年に最後の更新を行っていますが、今回の更新では、システム管理の効率化と安全性向上を目指して、システムの仮想化(サーバの仮想化、端末の仮想化)、指静脈認証などの最新の技術を基盤としたシステム更新を行っています。2018年後半からは次期システム(2021年1月稼働予定)に向けた準備が始まっています。
 
 医療情報部は、他の診療科や部門と比べても新参者で20年未満の歴史の浅い部門ですが、これまで総合病院情報システムの技術的発展を追随しつつ、全ての病院スタッフの協力のもと、拡大するシステムの管理を任され、その任務を遂行してきています。今後も、患者さんにとって安全・安心なシステムあり続けること、スタックにとっても使いやすく信頼に足るシステムであり続けられるよう、医療情報部全員で力を合わせて前に進んで行きます。

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