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インシデントレポートシステム「After Incident」


インシデントとは、医療事故とはならずとも、潜在的に医療事故の種となりうる体験を指し、日常診療の現場で “ヒヤリ”としたり”ハッ“としたりした出来事とされてきました(狭義のインシデント)。誤った医療行為などが実施されるも、結果として患者に影響を及ぼさずに済んだ事例もインシデントとして扱うこともあり、最近の医療安全領域では医療事故に至ってはいないが医療事故につながりうるものの総称です(広義のインシデント)。
確率的に、300程度のインシデントが存在すると、その中から大きな一つの事故が生じうることが知られています(ハインリッヒの法則)。逆に言うと、これらのインシデントを集めて早めに対策をとることによって、大きな事故を防ぐことにつなげていけると考えられています。
当院では、2000年度から紙運用でのインシデントレポート報告体制を開始し、2001年度よりオンラインデータベースを利用した運用方法に変更しました。 
2007年度には医療情報部と安全管理部の共同で、単にインシデントレポートの蓄積だけではなく、利用することで医療安全効果を直接発揮できるシステムを目指して、オリジナルのインシデントレポート管理システム「After Incident」を開発し、実運用してきました。
私たちはこの「After Incident」を用いて、どのようなインシデントが多いのか解析し、病院全体のシステムエラーを早期に発見、対応できるよう取り組んでいます。また本システムでは、どのような取り組みが有効であったかを検討することも可能となっています。
院内で発生しているあらゆるインシデントを把握し、自分の身の回りで同じインシデントが発生するリスクがないか確認することは、重篤な医療事故の発生予防に有効と思われますが、当院のシステムの特徴は、直近に発生したインシデントレポートを全職員が簡単に閲覧でき、当院ならではのインシデントに対する情報や有効な対策を共有することが可能である点です。 「After Incident」を運用開始後、重大な事例は年々、減少しつつあります。 インシデントレポートを重視した医療安全への取組みは、当院の安全管理における重要な柱となっています。

*「After Incident」はケービーソフトウエア(株)社より商品化されています。