留学記・海外での学会発表

海外学会参加報告
「American Association for Surgery of Trauma 75th Annual Meeting」
(米国 ハワイ)
救命救急センター 助教 田島 吾郎
全身性炎症における自然免疫受容体発現パターンによる感染症診断法
 
 2016年9月14~17日、米国ハワイ州 ハワイ島で開催された第75回アメリカ外傷外科学会(American Association for the Surgery of Trauma ; AAST)に、田﨑教授とともに参加してきました。AASTはアメリカ国内、ヨーロッパ、日本に加えて、近年はアジア、オセアニアからの発表も増えている外傷外科、Acute Care Surgeryにおける権威ある国際学会です。今回は開催地がハワイということもあり、通常の1.5倍の演題登録があり、参加者も1300人ほどと盛況だったようです。
 今回は基礎研究の研究報告でINFECTION DIAGNOSIS IN SYSTEMIC INFLAMMATION BY INNATE IMMUNE RECEPTOR EXPRESSION PATTERNという演題でポスター発表してきました。研究内容は自然免疫受容体の発現パターンから感染症を診断する新たな指標を作成するというものです。マウスの細菌性腹膜炎モデルと熱傷モデルで受傷24時間後の白血球における自然免疫受容体の遺伝子発現のパターンを比較し、レーダーチャートの面積比をbacterial infection index (BI)と定義して算出しました。結果、各群で特徴的な遺伝子発現パターンを示し、BIを用いて2つの病態を判別することができると考えられました。
 AASTは臨床研究が中心の学会で、日本とは比較にならない数の外傷症例や多施設研究が報告されており、こうした研究結果から世界の外傷治療のガイドラインが作られていきます。基礎研究ではSIRSや頭部外傷に関するものが多く報告されていました。興味深かったのは、さすがアメリカの学会だけあって、Gun shotに関する大規模な臨床データや、基礎研究では米軍関係の施設で集中治療室以上の設備と大型動物を使った生理学的研究が報告されており、日本の外傷研究との規模の差を感じました。日本からも10演題ほど発表があり、海外演題の中からInternational Awardには大阪大学の臨床研究が選ばれておりました。
 学会会場はキラウェア火山で有名なハワイ島でしたが、ハワイが好きなのは日本人だけではないようで、学会会場を一歩出ると観光客だらけで、学会であることを忘れてしまうような雰囲気でした。残念ながら有名なキラウェア火山やすばる望遠鏡のあるマウナケア天文台には行けませんでしたが、自然のマンタを見られるナイトシュノーケリングに行って、ライトに集まるプランクトンを食べにくる2匹のマンタを手の届く距離で見られました。2日目の晩は大阪大学のメンバーと一緒にビーチ沿いのおしゃれなレストランでリゾート気分を満喫してきました。ただ、いずれも夜だったので、せっかくのハワイでしたが日焼けすることなく帰ってきました。
 国際学会での発表はいろいろな刺激があって、今後の臨床、研究の励みにもなります。今後、海外でもインパクトのあるような研究を進めていけるようにがんばりたいと思います。
American Association for Surgery of Trauma 75th Annual Meeting①
American Association for Surgery of Trauma 75th Annual Meeting①
American Association for Surgery of Trauma 75th Annual Meeting①
American Association for Surgery of Trauma 75th Annual Meeting①
画像クリックで拡大表示 ズーム