センター紹介

messageごあいさつ

難病対策センター開設について
~これまで経緯とこれから~

我が国の難病対策は、昭和40年代に流行したスモンという薬害が社会問題となった事が契機となっています。スモンは腹部症状が先行し、その後に下肢末梢から上行する異常知覚・感覚障害、痙性麻痺、自律神経障害を呈し、重症の場合は視力障害をきたす難治性の神経疾患です。昭和44(1969)年に研究班による調査研究が開始され、翌年に整腸剤キノホルムとの因果関係が判明しました。このような状況の中で、昭和47(1972)年に難病対策要綱が策定され、スモン、ベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、再生不良性貧血、多発性硬化症、難治性肝炎の8疾患が難病として調査研究の対象とされ、特に前4つの疾患が医療費助成の対象となりました。

その後、難病研究は難治性疾患克服研究事業(研究費助成事業)として別途発展することとなりましたが、難病の医療費助成は昭和48(1973)年に56疾患が特定疾患治療研究事業(医療費助成事業)の対象となりました。また、平成10(1998)年以降、重症難病患者の入院施設の円滑な確保を目的として、都道府県に対して、「難病医療提供体制整備事業」の費用が補助されるようになりました。この時、長崎県では平成13(2001)年、国立療養所川棚病院(現長崎川棚医療センター)が「難病医療拠点病院」に指定され、同病院に「難病医療連絡協議会」が設置されました。
そして平成27(2015)年、国の予算不足で都道府県の超過負担が発生、さらに対象疾病間における医療費助成の不公平性の問題もあって新たに、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が施行されることになりました(消費税などの財源が充てられ、公費負担となる医療費は国と都道府県で半分ずつ負担)。難病の医療費助成に関しては、平成26(2014)年に110疾患(54疾患追加)、平成27(2015)年に306疾患が指定難病としてその対象となりました(現在、338疾患が指定難病)。

また、難病の医療提供体制の在り方については、難病法に基づき「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」が定められ、地域の実情に応じて難病の医療提供体制の構築及び推進が図られることになり、目指すべき方向性として

  1. 早期に正しい診断
  2. 身近な医療機関での適切な医療
  3. 「移行期医療」の推進
  4. 遺伝子診断等の検査体制の構築

などが提言されました。

このような経緯があって令和2(2020)年、長崎大学病院が「難病診療連携拠点病院」に改めて指定され、令和4(2022)年1月14日付けで長崎県から正式に「難病医療提供体制整備事業」が委託されました。今回、その受け皿として令和4(2022)年4月1日、長崎大学病院に「難病対策センター」が正式に設置された次第です。

委託された業務は

  1. 県内の難病に関する医療機関等との連絡調整及び難病医療提供体制の整備
  2. 県内の難病医療提供体制に関する情報収集及び情報提供
  3. 難病患者や関係機関からの難病医療に関する相談への対応及び関係機関への適切な紹介や支援要請
  4. 難病医療従事者等に対する研修の開催
  5. 国が整備した難病医療支援ネットワーク等との連携
  6. その他、難病に関する必要な業務

の6項目となっています。
難病対策センターの役割の柱は、図に示しますように難病医療提供体制の構築です。長崎県全体において、難病医療協力病院や開業医との連携強化、医療従事者やその他の関連スタッフに対する難病医療の啓発と普及を推進していきます。センターの中心となるのは難病認定看護師の資格を持った難病診療連携コーディネーターで、難病連携の状況把握と調整支援、教育、情報発信をその主な業務としています。初年度(令和4年度)は、毎月、オンライン形式で難病診療連携懇談会を開催し、長崎県、保健所、難病医療協力病院など関連機関とのコミュニケーションを密に図り、現状把握と課題を見つけ、体制整備につなげるよう努めています。現在、筋萎縮性側索硬化症患者の意思決定支援、転院先の確保、意思伝達装置の導入等について協議しています。

これからの本センターの活動につきまして、皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

令和4年11月22日
長崎大学病院 難病対策センター長
辻野 彰

難病対策センターの業務内容
(令和5年度)

県の難病医療連携の状況把握と調整促進 難病医療協力病院や各保健所、難病相談支援センターと連携し、県内の難病医療連携に関する状況把握を行い、調整の促進を図ります。
専門診療科・部門との連携促進 診断や治療において、適切な医療が提供されるよう長崎大学病院内の各診療科・部門と連携し支援します。
難病医療従事者教育 難病医療従事者向けの研修会を実施します。
意思伝達装置導入支援に関わる難病医療従事者教育 意思伝達装置導入支援研修会の開催、意思伝達装置の貸出などを通して医療従事者への教育の場を提供します。
難病医療情報の発信 難病医療従事者へ難病医療に関する情報提供を行います。
難病医療相談窓口(医療従事者向け) 医療従事者より難病医療に関する相談を受け付けます。
難病ネットワーク照会 早期に正しい診断が可能な医療機関や難病医療支援ネットワーク等に相談・照会します。

スタッフ紹介

センター長 辻野 彰
(長崎大学病院 脳神経内科教授)
副センター長 森内 浩幸(長崎大学病院 小児科教授)
佐田 明子(長崎大学病院 副看護部長)
難病診療連携コーディネーター
(難病看護師)
浦 めぐみ(長崎大学病院 看護師)
事務局担当 吉村 俊祐(長崎大学病院 脳神経内科助教)

センター概要

名 称 長崎大学病院難病対策センター
住 所 〒852-8501 長崎県長崎市坂本1丁目7番1号
代表者 辻野 彰