新生児治療回復室(GCU)が大切にしていること

GCU

"GCU看護師長 川久保真弓"

 新生児治療回復室(GCU)は新生児集中治療室(NICU)での急性期治療を経て、ご家族が育児ケアや医療的ケアを習得するための在宅移行期を過ごす場所です。

 医療的ケア児という言葉を耳にしたことはありますか。

 医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のことを言います。 「歩けない・話せない」重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複する重症心身障害児と異なり、新生児医療の発達に伴い、「歩ける・話せる」といった「動く重症児」の存在が注目されています。
医療的ケア児等の支援の充実を図るため「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律81号)」に基づく「医療的ケア児支援センター」の設置を推進するとともに、医療的ケア児等に対する支援者の養成、地域で関係者が協議を行う場の設置、医療的ケア児等の家族に対する支援などを総合的に実施しています。長崎県は、令和4年8月諫早市に医療的ケア児支援センターが開設されました。GCUから退院する医療的ケア児はすべて紹介を行い、退院後のサポート窓口となって頂いています。

ここ数年、医療的ケア児の増加によるGCUの長期入院が問題となっていました。
2023年度に地域医療連携センター、小児外来、小児病棟と連携を行い、小児在宅療養パスが完成しました。そして、各時期に沿ったマニュアル、パンフレットを改訂し、GCUにおける在宅支援整備を行いました。例えば、医療的ケアの内容や家族背景に応じた面会時間の延長、プチ母児同室、1泊2日の同室などを個別に検討し、指導に十分な時間を確保しました。キーパーソンや家族の役割、自宅の間取りなどを確認し、ご両親主体で自宅退院に向けての準備を一緒に行います。

長期入院による母子分離の期間は、愛着形成に影響を及ぼします。特に、医療的ケアを必要とする場合、「この子がかわいいと思えない」「漠然と不安です」「夜中に眠ってしまってアラームに気づけなかったらどうしよう」など自宅退院を目前としたご両親が一度は抱く感情です。特にお母さんが1人で抱え込んでしまう傾向があります。私たちは、これからは行政、福祉、医療が連携を取り合ってサポートしていくことを伝えます。退院前に各関係者による退院前カンファレンスを行います。ご両親は人数の多さに圧倒されますが、「これだけ多くの人が、この子のために関わってくれているんだ」と覚悟を持つ瞬間だと感じています。 私たちは、どんなお子さんでも自宅で家族と一緒に過ごすことを目標に、日々頑張っています。退院後の外来の際に、成長した子供たちを見ることが一番の楽しみです。