Department of LABORATORY MEDICINE

 就任14年目のご挨拶
栁原克紀教授
長崎大学大学院 病態解析・診断学分野 教授
長崎大学病院 臨床検査科/検査部 部長
長崎大学 学長特別補佐(産学連携(医療)担当)(兼務)
東北大学非常勤講師
大阪公立大学非常勤講師
栁原 克紀


 2013年1月1日に長崎大学大学院 病態解析・診断学分野(臨床検査医学)の教授、および長崎大学病院検査部長を拝命し、14年目を迎えています。2021年には臨床検査科を設立していただき、診療科としても活動を始めました。また、2026年4月から日本臨床検査医学会理事長を拝命し、臨床検査医学のさらなる発展に向けて、その責務の重さを感じております。教室の使命は、臨床検査医学に関する診療、教育、研究活動を行いながら、基礎医学と臨床医学の橋渡しや診療支援をすることと考え、邁進して参りました。安全・安心で、かつ最先端の医療を推進する上で、臨床検査は不可欠なものであると実感しています。以下に、今後の抱負を述べます。

2026年8月吉日


診 療
診療  私たちは患者さんを受け持つことはありませんが、検査を通じて患者さんを診ております。長崎大学病院臨床検査科・検査部の責務は、大学病院で行われる高度先進医療を支え、診療に貢献することです。当院検査部は細胞療法部と共に2017年3月16日にISO 15189:2012の認定を取得し、その後も更新を続けてきました。2024年にはISO 15189:2022へ移行し、さらに2025年には病理診断科・病理部も認定範囲に組み入れ、検査部・細胞療法部・病理部が一体となった品質管理体制の充実を進めています。
 COVID-19パンデミックでは、全国的にも早い時期からPCR検査を開始し、院内および県内の診療・感染対策に貢献しました。そこで培った遺伝子検査の経験を生かし、次世代シークエンサー(NGS)をはじめとする先端技術の診療への応用を進めていきたいと考えています。
 今後は、医師の働き方改革への支援も重要です。臨床検査技師が担うことのできる業務に積極的に取り組み、タスク・シフト/シェアを通じて医療の質の向上と医師の負担軽減に貢献していきます。また、検査の適正化や業務の効率化、新たな検査技術の導入を通じて、診療の質を高めるとともに、病院経営にも貢献できる検査部を目指します。

教 育
教育  卒前教育;医学教育は単なる知識の習得ではなく、少ない基本的事項から深い洞察力を発揮できるかが重要になります。検査値は単なる数字にすぎませんが、異常値がでる病態を把握できるようなスキルも身につくように指導します。
 新しい検査も将来的に重要になりますので、それらに関する情報も提供します。臨床実習では、検査を実際に行わせ、検査の意義について深く理解できるように努めます。
 卒後教育;医学の進歩に伴い、検査の種類は膨大になってきており、検査データを幅広く解釈できる医師が必要とされています。長崎大学では、現在4名の専攻医が臨床検査専門医を目指して研修に励んでいます。今後も、より多くの臨床検査専門医を育成し、将来の臨床検査を担う人材を輩出していきたいと考えています。

研 究
研究  感染症は全ての診療科に関連する疾患であり、薬剤耐性(AMR)は国際的にも深刻な課題です。新規抗菌薬を適切に使用するためにも検査結果は極めて重要であり、感染症診療と臨床検査の結びつきは一層強くなっています。私自身も、2025年から薬剤感受性試験などの国際的な標準化を担うCLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)アドバイザー、2026年から厚生科学審議会専門委員(薬剤耐性(AMR))を務めています。これらの活動で得られる国内外の知見も生かしながら、遺伝子検査を含む新しい診断法の開発や、迅速かつ的確な病原体・薬剤耐性菌の検出に取り組み、AMR対策に貢献していきたいと考えています。
 HTLV-1の研究で培った経験を基盤に、ウイルス感染症の診断や感染症に伴う発がんの研究も継続しています。HTLV-1感染からATL発症に至る病態の解明は、当教室が長年取り組んできた重要なテーマであり、さらに発展させていきます。また、RSウイルスや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても、診断や病態、臨床的特徴に関する研究に取り組み、ウイルス感染症研究を幅広く展開していきます。
 また、消化管、生殖器、皮膚などのマイクロバイオームについて、複数の診療科と共同研究を進めています。マイクロバイオームは感染症のみならず、がんをはじめ多様な疾患との関連が注目されており、引き続き重要な研究分野として取り組みます。さらに近年は、シングルセル解析にも注力し、細胞集団を一細胞レベルで解析することで、感染症や免疫応答、発がんなどの病態をより詳細に理解し、新たな診断・治療につながる知見の創出を目指しています。