教授からのメッセージ

長崎大学病院救命救急センター センター長:田﨑修 就任のご挨拶
長崎大学病院救命救急センター
センター長  田﨑 修

 平成23年6月1日付で澄川センター長の後任として着任致しました。長崎大学病院救命救急センターは2010年4月にスタートし、1年余りが過ぎました。救命センター発足前にも救急部としての診療実績を伸ばして参りましたが、救命センターになった昨年度は受け入れ患者数が5000を超えるに至りました。これは2002年度の4倍以上です。このことは、長崎大学病院の救急医療システムが着実に向上してきたことを示しています。
 センター長としての今後の私の仕事は、これまで築かれてきた救急医療システムをさらに発展・充実させること、救急疾患に適切に対応できる医師を育成すること、そして、救急医学の発展に寄与することであると考えております。


 近年、人口の高齢化、疾患の多様化、そして治療の高度化に伴い、求められる救急医療のレベルも急速に高まって参りました。こうした背景の中で大学病院の救命センターの使命は、重症救急疾患に対して24時間365日迅速で高度な救急医療を提供することにあります。これを達成するためには、救命センターが各専門科と連携し、まさに長崎大学病院一丸となって集学的治療を提供する必要があります。私は、重症救急患者の受け入れ、および迅速で高度な治療がこれまで以上に円滑に進みますように、まずは病院内での体制づくりに取り組む所存であります。また、救命センターを適切に運用していくためには、地域との連携も極めて重要であります。すなわち病院前救護、1次2次救急、そして治療後のリハビリテーションをそれぞれ担当してくださる救急・消防機関や各病院の皆様との連携であります。さらには、市民の皆様の救命センターへのご理解も非常に重要です。これがうまくいかなければ、救命センターはすぐに回転率が低下し機能不全に陥ってしまいます。そこで、院内の体制づくりと共に地域の皆様との協力体制の構築にも取り組んで参りたいと存じます。


 上述致しましたように、近年の医療の高度化に伴いまして医療を提供する側も専門化・細分化の傾向にあります。特に高度な医療を提供する大学病院ではその傾向は顕著となります。しかしその一方で、専門分野から外れた疾患に対して対応できない医師が増加する現状にあることも事実です。救急医療は「医の原点」と言われます。困っている患者さんを可及的速やかに診断し、必要であればすぐに処置を施し、専門的治療への道筋をつけることは救急医療の一つの重要な領域です。そしてこれは救急専門医でなくとも一人の医師として身につけねばならない基本的能力であります。私は、将来の医療を担う医学部生や初期研修医に対して、この「医の原点」を伝えていきたいと考えています。


 救命センターには死に瀕した患者さんが日々搬送されて参ります。ベストを尽くしても現代の医学では乗り越えられない大きな壁が存在し、そのたびに医師としての無力さを感じさせられることも少なくありません。しかし、われわれには、大学病院の一員としてこの壁がどんなに高くてもそれも超えるべく挑戦し続ける義務があります。近日中に救命救急センターにも「長崎大学大学院救命救急医療学講座」を開設する予定です。そして、そこでの研究を通して現在の救急医療レベルをさらに向上させて参りたいと考えています。


 救急医療は、「時代」および「地域」によってそのニーズは大きく異なると言われます。私はこれまで、大阪大学高度救命救急センターに勤務し救急医療に取り組んで参りました。今後は、急速に変化する「現代」と、ここ「長崎」に1日も早く順応し地域の救急医療・救急医学の発展のために精進致す覚悟でございます。皆様のご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

平成23年6月1日