教授からのメッセージ

長崎大学病院救命救急センター センター長:田﨑修 救急医のキャリアプラン
長崎大学病院救命救急センター
センター長  田﨑 修

 2017年度から新専門医制度が始まります。19診療科のいずれかを選択するという状況に直面し、進路に迷っている学生や研修医の皆さんも少なくないでしょう。救急科も19基本診療科の一つになりました。それだけに、「救急もやりたいけど外科もやりたい」、「救急もやりたいけど循環器内科もやりたい」等という希望をお持ちの方は特に悩みが深いかもしれません。
 確かに新専門医制度は、一つの基本診療科を選択し、その後subspecialtyを修得するという基本骨格になっていますが、このことは必ずしも上記の様な皆さんの希望が叶わないことを意味するものではありません。即ち、一生救急のみをしなくていけないということではないのです。例えば救急科の専門医を取得した後に、救急に携わりながら外科や循環器の基本診療科を修めていくことは可能だと考えます。また、その逆のことも可能と言えます。入局という形にこだわれば話は少し難しくなるかもしれませんが、プログラムを基本に考えれば、気楽な気持ちで専門診療科を選択してもよいと思います。
 一方、「救急は一生をかけてやる仕事ですか?」という疑問には、「Yes」と答えることができます。また、「救急医学」は、一生をかけて極めていく価値のある学問ということもできます。今や救急科や救急医学が関わる領域は極めて多岐にわたります。救急隊と協力し救急医療体制を構築するMedical Control、ドクターカーやドクターヘリによる病院前診療、Emergency Roomでの初期診療、重症患者に対する集中治療等に加え、平時も含めた災害対応も救急医が中心となります。「救急科」が基本領域に位置づけられた理由は、他に代替できる診療科が無いことを意味するものであり、救急のそれぞれの領域に研究に値すべき「clinical question(課題)」が無数にあります。救急医療を進歩させるためには、その課題に答えるべく研究を進め、臨床レベルを向上させていかなくてはなりません。これらを考慮すると「一流の救急医」になるためには、自分で研究を企画し実行できる能力を身につけることも極めて重要なのです。
 以上をふまえた上で救急医のキャリアプランを例示すると下図のようになると思います。

救急医のキャリアプラン


 専門研修プログラムの3年間は臨床的な技術や考え方を身に着けることが中心になります。その次の5年間は、他の専門診療科や救急のsubspecialtyを身につけるという選択肢に加え、リサーチマインドを醸成するという選択肢(大学院等)もあります。
 そして、10年目以降は、それまでに蓄えた自分の力をさらに伸ばす、あるいは不足している部分を補うことにより一層自分自身を成長させる時期に入ります。また、救急科専門医や他の診療科の専門医として活躍する以外に、離島医療や在宅医療を志す方にも、救急での研修は大いに役立ちます。
 救急医療を志した若い先生方が今後多方面で活躍されることを心から願っています。
平成28年5月2日