留学記・海外での学会発表

海外学会参加報告
「American Association for the Surgery of Trauma ; AAST」
(米国 フィラデルフィア)
救命救急センター 助教 平尾 朋仁
 2014年9月10~13日、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアで開催された第73回アメリカ外傷外科学会(American Association for the Surgery of Trauma ; AAST)に、田﨑センター長とともに参加してきました。AASTは、アメリカ国内のみならず世界中から演題が集まる、外傷治療の基礎・臨床に関する権威ある国際学会です。
 私(平尾)は、「Validation of a new prognostic model in patients with severe traumatic brain injury: a multicenter observational study(重症頭部外傷の予後予測式の検証)」という演題で、ポスター発表をしてきました。これはセンター長の田﨑が大阪大学を中心とした多施設臨床研究で確立した重症頭部外傷の予後予測式を用いて、その妥当性・精度を外部データにて検証(external validation)した報告です。これまでにも重症頭部外傷に対してはIMPACTやCRASH modelといった予後予測のモデルがありましたが、本研究のモデルは“頭蓋内圧”を予後予測因子として組み込んだユニークなもので、今回行ったexternal validationによって、従来の予測式と同等以上の予測精度を有するモデルであることが示唆されました。学会では、不慣れな英語でのプレゼンテーションに大変緊張しましたが、座長の先生や参加者の方々と有意義なディスカッションができ、大変勉強になりました。
 学会の合間には、ちょっと散策をかねて学会場近くのフィラデルフィア美術館へ足をのばしてきました。ここは、アメリカ建国100周年を記念して建設されたMemorial Hallを起源とする国内最大級の美術館で、ゴッホ「ひまわり」やセザンヌ「大水浴」をはじめ多くの収蔵品を誇ります。しかしなんと言っても有名なのは、あの映画「ロッキー」で、シルベスター・スタローン扮するロッキー・バルボアがトレーニングのために駆け登った正面階段でしょう。私たちが訪れたときにも、ジョギングやお散歩を楽しむ方々を多く見かけました。階段下すぐそばには、ロッキーの銅像が設置されており、ここも有名な観光スポット&撮影ポイントとなっているようです。また、学会の夜は、日本から参加した他施設の先生方も一緒に集まり、フィラデルフィアの夜を目と耳と舌で堪能してきました。
 AASTへの参会は今回が初めてでしたが、頭部に限らず外傷診療に関する多くの基礎的・臨床的な最先端の研究に触れることができ、いろんな刺激を受けるとともに外傷診療の魅力を改めて認識する貴重な場となりました。そして、自分の英語力のなさを改めて痛感した、ありがたい(!?)機会でもありました。
 救急はよく「医の原点」と言われます。救急の現場では、病気や怪我で困っている目の前の患者さんを助けるために、自分の持つ知識や技術を総動員して診療にあたることが必要です。1つの臓器や領域にとらわれず総合的な視点で患者さんを診るといった点では、まさに救急は「医の原点」なのかもしれません。そんな救命救急センターでの仕事は、毎日とても忙しいものではありますが、そこでいろんな患者さんと接するなかで様々な疑問や興味が生まれ、学びの機会にもあふれています。そういった日々の臨床から生まれる好奇心を研究として深めていき、そこで得られた新しい知見を国内外で発表できるというのも、救急医学の醍醐味のひとつだと思います。
 医学生や研修医の皆さん。ぜひ私たちと一緒に「救急」というフィールドで臨床や研究を頑張ってみませんか!
American Heart Association 2014 Resuscitation Science Symposium① American Heart Association 2014 Resuscitation Science Symposium②
American Heart Association 2014 Resuscitation Science Symposium③
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American Heart Association 2014 Resuscitation Science Symposium④