留学記・海外での学会発表

海外学会参加報告
「American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting」
(米国 ボルチモア)
救命救急センター 助教 田島 吾郎
全身性炎症における自然免疫受容体発現パターンによる早期病態判別法
 
 2017年9月13~16日、米国ボルチモアで開催された第76回アメリカ外傷外科学会(American Association for the Surgery of Trauma ; AAST)に入局1年目の村橋先生と参加してきました。AASTは外傷外科、Acute Care Surgeryでは最も大きな国際学会で、毎年日本からも数演題の発表があります。口演での採択は結構難しいのですが、今回は久々の口演ということで、昨年のハワイでのポスターとは全く違う緊張感を持って臨みました。
 今回は昨年同学会でポスター発表した基礎研究を発展させて、EARLY DIAGNOSIS USING CANONICAL DISCRIMINANT ANALYSIS OF INNATE IMMUNE RECEPTOR GENE EXPRESSION PROFILE IN INFECTIOUS OR STERILE SYSTEMIC INFLAMMATIONという演題での口演発表でした。研究内容は自然免疫受容体の遺伝子発現パターンにより、受傷早期より感染性と非感染性の病態を判別するというものです。マウスの細菌性腹膜炎モデルと熱傷モデルで、受傷6,12,24時間後の白血球における自然免疫受容体の遺伝子発現のパターンを判別分析することで、過誤率0%(6,12,24時間後)で各病態を判別することができました。発表に関しては、持ち時間が20分もあり、discussantが結構長い質問をするので、それに持ちこたえるのに精いっぱいな感じでした。
 AASTは臨床研究が中心の学会で、最近日本でも始めているような学会主導の研究や、全国のレジストリーデータを解析した大規模な臨床研究が目立ちました。基礎研究では出血性ショック、頭部外傷や敗血症に関するものが多く報告されていました。海外からの参加者の交流のためのモーニングセミナーというのが朝6時からあり、せっかくなので参加しましたが、ヨーロッパ中心に南米、中東などからの参加者中、海外では日本からの参加者が一番多かったようです。
 ボルチモアは東海岸の大都市で、かつては非常に危険な街でしたが、ウォーターフロントの開発などで、最近はだいぶ安全になっているようでした。海沿いなのでシーフードが有名なのですが、とくにBlue Clubというワタリガニが名物です。謎のスパイスでボイルしたワタリガニを机の上に敷いた紙の上にそのまま積んで、木槌でたたき割ってたべるというワイルドなスタイルでした。僕らは1人2匹ずつ食べましたが、アメリカ人の机にはとても食べきれるとは思えない量のカニが山と積まれていました。また、ボルチモアといえば天下のJohns Hopkins大学がある街ですので見学に行ってきましたが、建物を観て回るだけでも、その歴史と財力に圧倒されました。
 今回のようにデータを国際学会で発表して論文にまとめるというサイクルを安定して続けられるようにがんばろうと思いました。また、医局の若い先生たちにも海外学会で刺激を受けて、次は発表しに来てもらいたいと思いました。
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting①
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting②
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting③
American Association for Surgery of Trauma 76th Annual Meeting④