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医科初期臨床研修

河野前病院長が君たちの質問に答えます!

※本座談会は2010(平成22)年、河野茂前病院長が病院長2年目でいらしたときに実施したものです。

1.研修について

学生時代に一番やるべきだと思うことは何ですか。

学生時代に一番やるべきだと思うことは何ですか。何にも、ありません(笑)。
あなたは、「一番やるべきこと」をすでにやった結果、そこに立っています。
授業、試験、クラブ活動、アルバイト、恋愛・・・6年間、日々やるべきことを一生懸命やった末に、あなたの今があります。素晴らしいことです。大事なことは、何をやったかをふり返り、これから何をやるべきかを考えることです(Reflective learning)。強いてあげるとすると、医師は、人の中で、人の為に仕事をするので、コミュニケーション能力は非常に必要です。様々な人との出会いの中で、自分をふりかえってみたらいかがでしょうか?

研修医に求めるものは何ですか。

何も求めません。
研修医は、社会人であり、そしてプロフェショナルの道を追求する人です。
ですから、私があなたに何かを求めるというより、あなたが、何かを求めて、積極的に学んでいく必要があるからです(Positive learning)。それが、大人ということです。研修医時代に経験したことは全て必ず将来の財産となります。2年間はあっという間に過ぎていきます。一日一日を大事に充実した研修医生活をおくってください。

初期臨床研修を大学病院で行う場合と市中病院で行う場合のメリット、デメリットについてどのようにお考えですか。

新制度がスタートして、6年が経ち、時代は大きく変わりました。
(市中病院=プライマリケア=初期、大学=専門的=後期)の構図は、完全に崩れています。
一般的に、大学病院は、非常に専門的なので、プライマリケアの勉強にならないといわれていましたが、救命センター等が多くの大学で設立され、地域研修にも力を入れて、プライマリケアもできる研修となりました。逆に、市中病院でも、特定の分野では大学以上に専門的で、特定の疾患のみ多く初期研修には向かないという状況もでてきました。指導医に関しても、幅広く指導できる医師は、かつては市中病院に多くいましたが、最近は、そういう指導医が、大学にどんどん登用され、大学の教員陣もかつての研究志向の人だけではなく、臨床に情熱を持ち後進を指導する人が多くなりました。もはや、メリット、デメリットを、一般化することは困難です。皆さんが、自分の目でしっかりと見なければならない時代となりました。長崎大学病院は、ここ数年の初期研修の改革(CHANGEプロジェクト)は、全国的にも注目されるほどとなっています。教育環境、労働環境等思い切った改革がなされ、市中病院に劣る点は少なくなったと思います。自分の目で確かめてください。

2.大学の医局について

医局の魅力は何ですか。

医局の魅力は何ですか。「医局」という言葉をネガティブに捉え、自由を奪われる旧態依然のヒエラルキーがある世界だと思っている人は多いかもしれません。しかしながら、医局という集団は、臨床や学問を追求し、人を育てて、世に貢献することを目的とした集団です。そこには、ひとりひとりの医師としての個人としての幸せを、医局がサポートすることが基本にあります。もちろん、限界もありますし、社会人としてのルールもありますが、例えば、私の第二内科では『よく学び、よく遊べ』をモットーに活気あふれる自由な雰囲気の伝統が続いています。様々な医局が、それぞれの伝統を持っています。大学病院は、救急医療から慢性疾患の管理まで幅広い内科全般の知識を習得するとともに、精神的にも患者の気持ちを思いやれる医師の育成する教育体制は、誇れるものがあると思います。加えて、人材が豊富であり、地域医療に努力されている勤務医・開業医の先生もいれば、研究で世界的に活躍される先生もいらっしゃいます。臨床でも研究でも若い医師の目標となれる先輩(ロールモデルが豊富)が多いのが一番の魅力です。

入局者に求めるものは何ですか。

何も求めません(笑)。 あなた自身が、貪欲に求めてください。一生の友達となるだろう同期生、少々熱心すぎるかもしれない先輩、国内外で羽ばたけるキャリア、様々な臨床や研究分野、多彩な人々や師との出会い等、すべてが私達の教室にはあると思います。あなた自身が、楽しく貪欲に、私達を困らせるくらいの情熱で何かを求めてくれたら、こんなに幸せなことはないでしょう。何も要りません、今のあなた自身で十分です。

3年目からは長崎大学の医局への入局を考えた上で、長崎大学で初期研修はせずに別の場所で研修して3年目から長崎大学に戻ってくることをどう思われますか。

勿論構いません。長崎大学出身でも、長崎大学以外の方でも歓迎します。医局によって若干の差はありますが、長崎は、来るもの拒まずの姿勢が伝統的にあります。しかし、医師として、プロフェショナルの第1歩を誰と何処でどういうふうに過ごすかは、非常に重要です。大学外で初期研修する場合でも、<つながる>ことは大切と思います。セミナーや学会で、大学の先生らと一緒に勉強したり、大学のイベントに出席したり、個人的にメールの交換等をすることは、目の前の狭い世界にあなた自身を埋没されることを防ぎます。大学と<つながる>と、入局勧誘があるのでわずらわしいという人も多いかと思います。しかし、様々な人と<つながる>ことでしか、医師の成長はないと思います。

教授は医局員のためにどのようなことを心がけていらっしゃいますか。

一言でいうと、<医局員ひとりひとりが、幸せになってもらいたい>ということを常に考えています。みんながそれぞれの希望や価値観を持っているので、すべてに対応することは不可能ですが、幸せをつかむ基盤づくり、つまり環境を整えることを心がけています。臨床、研究、留学、また結婚や出産、復帰等に対して、スムーズに実現できるような環境を皆で作り上げることを心がけています。One for all, all for oneの精神ですね。具体的には、ひとりひとりとよく話し、仕事やキャリアや家庭がうまくゆくためには、何が必要かを見出して、素早く、対応しています。おそらく、他の教授も同じだと思いますよ。

入局後の異動はどれくらい希望などを言えるのでしょうか。

希望は100%言ってください。これまでも個人個人の希望をじっくり聞いています。その上で、チームで対応できることと個人で対応しなければいけないことを考えていきます。医局によって、多少の違いはあるかもしれません、しかし、昔のイメージである、医局=強制人事ということは、まったくないと思います。入局を躊躇する大きな理由のひとつに<異動>があることも十分理解しています。アメリカのように、異動=キャリアアップというような考えが、日本にもないことも分かっています。異動が医局員個人と関連病院の幸せにつながるようになることを常に心がけています。

ある程度キャリアを積んでから医局に入ることは可能でしょうか。

基本的に、卒後何年目であろうと可能です。例えば、私の教室では、今までも数多くの分野から入局しています。外科系から入局された先生もおられますし、基礎系で業績をあげられてから入局された先生もいます。医局とは、その個人のキャリアアップを応援する組織であることは間違いありません。入局される前のキャリアを潰すようなことは、100%あり得ませんし、様々な人が交わることにより、いろんなアイデアや組織の力が増すこともあります。

各科にいらっしゃる大学院生の先生方の位置付けがよくわかりません。学生から見ると、他の先生方の仕事と違いがないように見えるのですが…。大学院に行く目的や期間などを教えてください。

学生の目からみると、大学院生と他の先生の仕事は変わらないように見えるかもしれませんが、大きく異なります。大学院生は頭の中で<自然科学>というレンズを通して、データーや疾患等を見ているのです。医師から科学者の目になっており、ものの見方が大きく深く変わるのです。それが後々臨床家に戻っても役に立ちます。ですから、大学院に行く目的は、幅広い人間、深みのある医師になるためです。また、大学院における研究は、多少なりとも医学の進歩に貢献でき、そこに喜びもあります。臨床だけで一生を過ごすことと比較しても、その後の臨床力に幅と深みが増してくるのは明らかです。大学院における研究と生涯にわたる臨床はひとつの線上にあると考えます。
大学院には2通りあります。仕事(臨床)をしながら研究する大学院と4年間研究最優先の大学院です。第二内科では患者を持たずに研究中心の大学院生が多くを占めています。医局により、大学院生の扱いについては、若干の方針の違いもありますが、長い医師人生の中で、どっぷりと研究につかる時期は、医師としての力をじっくりと発酵させる時間だと思います。
おいしいお酒を造るのと同じで、決して無駄ではありません(笑)。

初期研修が二年間の人と三年間の人では同期でも、入局が一年遅れるのですが扱いはやはり一つ下になってしまうのですか。

そんなに心配する問題ではありません。医師は、**年卒業とか**年入局とか、を重要視された時代もありましたが、今は、その人がいかに働くか、どのような能力を持っているかで判断される時代です。

3.その他

どうして、先生方は医者になろうと思ったのですか。医者を目指した原点を知りたいです。また、貴科に進もうと決めたきっかけを教えてください。

祖父が医者であったため、小さいころから医者を目指していました。学生時代から将来は、故郷で開業しようと思い、幅広く勉強したかったからです。もちろん、呼吸器疾患に興味があり、第二内科を選びましたが、ふり返ってみると教育熱心な先生が多いと感じたことが最大の理由と思います。入局しましたが最初の10か月程の研修が第二内科で、その後は第一内科、血液内科や地域病院でも幅広く研修しました。いろんなところで学びましたが、第二内科の系統だった指導内容と教育体制のおかげで、なんとか医者を続けられたという感じです(笑)。先輩方が築き上げた教育システムが、第二内科の一番の財産でしょうね。また、大きな教室ではありましたが、雰囲気がよく、沢山のロールモデルがいました。地域医療に努力されている先生、先端医療にまい進する先生、研究で世界的に活躍される先生、医師としての人生の先輩としての様々なモデルが私を育ててくれたといっても過言ではありません。

医師をやっていて良かったと思うところはどこですか。

やはり<変化>を手助けできることでしょうね。病気が良くなるという<変化>や、患者さんが元気になるという<変化>、研修医がプロの顔つきに<変化>、医局員がキャリアアップするという<変化>・・等を手助けできることは本当に良かった〜と思いますね。もちろん、医師は万能ではありませんし、私も非力なことは多く、残念な<変化>に直面することも多々あります。しかし、それも含めて<変化>に立ち会える喜びを感じることがあります。今、病院長という立場で、「若人が集う長崎大学病院」を目指して職員の皆さんと全力で取り組んでいるのですが、目に見えて多くの<変化>が起こってきています。最も素晴らしい変化のひとつが、若手医師の「働きやすくなった」「やりがいがでる」「仕事が面白くなった」という声です、本当に嬉しく思います。

医療業界の今後の見通しについて語って下さい。(医師数、地方の医療崩壊、医師増産政策による医師の低レベル化の危惧に関して)

皆さんは、決して悲観する必要はないと思います。それぞれの立場で医師は頑張っており、日本の医療が世界水準で低レベル化するとは思いません。日本は確かに医療に関する多くの問題を抱えていますが、世界的な視点でみると、日本のように質の高い医療を広く国民に平等に安価で提供している国は少ないのです。それは、これまで日本人が器用で勤勉であったため成し遂げたことかもしれませんが、今後も皆さんが、夢と誇りを持って歩めば心配はありません。私は常に積極的で建設的な考えを持つべきだと考えています。夢を持って努力し実現を目指すことは、楽しいことです。報道される医療業界の一面だけをみて悲観することは、決していい方向に向かわないと確信しています。前を向いて、進もう!

大学病院では手術は上の先生が執刀医をされていることが多く市中病院と比べ若手医師の経験が積みにくい印象があるのですが、若手医師が早期から手術経験を積むにはどうしたらよいでしょうか。

みなさんの<印象>は今、大きく変わりつつあります。それは、大学病院でも手術件数が飛躍的に増えています。それは、医療の集約化のためですが、長崎大学病院の手術件数や手術の種類はここ数年で、2倍近くになっています。ある外科系の診療科では専門医を取るためには、大学病院で研修することが必須となりました。古い<印象>や、情報の古い意見ばかりに左右されると、大きな落とし穴に陥ることもあります。注意してください。!

自分で一人前の医師になったと感じたのはどんなときでしたか?

難しい質問ですね。今は、<新人>の病院長ですが、多くの職員の皆さんのおかげで、多くの改革をなんとか成功させましたが<一人前>の病院長とは思っていません。まだまだ勉強することは沢山あります。それと同じように、医療はチームで、皆で行うものですから、また、医師とは一生勉強し続ける職業ですから、<一人前>になったという自覚がいつだったかとははっきり覚えていません。強いて言えば、30代で医局長をしていたころ、35人も入局させたのですが、その頃かもしれませんね。入局勧誘の際に、「君たちを、一人前にしたい!」と言っている自分に気付いたときですかね(笑)。

紙カルテと電子カルテはどちらがいいと思いますか?

明らかに電子カルテがよいと思います。病院内のどこでもカルテやフィルムを見ることができ、多科との連携も取りやすくなっています。実は、長崎大学の電子カルテは、地域病院とつながっていて(あじさいネットワーク)、全国的にも最先端のシステムです。長崎大学をモデルに電子カルテやネットワークシステムを構築しようとしており、他県からの視察団がひっきりなしに来ています。ただひとつの難点は、電子カルテでは、私の達筆が残らない(笑)。

大学病院と市中病院で働くときの違いはどんなことですか?

ありませんヨ(笑)。どう働くかは、あなた次第ですので、どこで働こうが、一生懸命やれば大きな違いはありません。一般的に、大学病院ではカンファランスなど教育の機会が多く、より深く基礎から最新医学まで勉強でき、さらに貴重な症例にも出会え、市中病院では出来ない高度医療も行えます。しかし、それは、あなたの積極性にかかっており、いくらいい環境があっても、利用しない人は利用しなく、どんなに劣悪な環境でも、勉強する人はなんでも吸収できます。つまり、どこに行こうが、あなた次第です。

臨床医には実際どれくらい休みがありますか。内科医と外科医で休みはどう違いますか。

休みは大事ですね。大学病院では基本的に土日・祝祭日は休みですが、大抵の先生は2日間の休みがあれば少なくとも1度は出勤し患者の状態を見に来ています。内科、外科ではなく、主治医がチーム制であれば交代で休むことはもちろん可能です。また夏休みも1週間以上とることができます。
最近は、長崎大学病院全体でも、勤務医の雑務軽減、負担軽減で様々な取り組みがなされ、効率的休みが取れるようになっています。スタッフの数が多い大学の方が市中病院に比べ、海外への学会出張や、長期休暇が取れるようなシステムが発達していると思います。特に女性医師の労働環境の改善や出産、結婚しても働けるシステムの構築には努力しています。

医者以外だったらどんな職業についていたと思いますか?

子供のころから医者を目指していましたが、父が戦闘機のパイロットだったため、パイロットになる夢を持ったこともありました。いずれにしろ、人の命をあずかるプロフェショナルになりたかったのかもしれません。今は、趣味で書道を習っているのですが、なかなか奥が深く、書道家というのもいいなあ〜と思ったりします、あこがれの職業No.1ですネ(笑)。

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