長崎大学病院脳神経内科

ごあいさつ

教授就任の挨拶(平成26年8月)

長崎大学病院脳神経内科
教授 辻野 彰

 第一内科神経班と脳卒中センターの内科部門は、脳神経内科として新たに出発することとなりました。神経内科の頭に「脳」がついたのは、「21世紀は脳の時代」と呼ばれていますように、臨床医として総合的に「脳」を診ていかなければならないとの思いが込められています。また、英語表記のDepartment of Neurology and Strokologyは、神経内科学だけでなく、脳卒中学(Strokology)も一つの柱として行くことを表しています。
 そもそも脳卒中学は、循環器学とのかかわりが大きい分野です。しかも急性期治療や予防医学の点で、両者の診療スタイルはほとんど同じ面があります。しかし、脳循環はより複雑でneurovascular unitなど、特有の構造や機能を持ちます。脳卒中学と神経内科学(主として神経難病を診療する場合)とは、神経機能解剖学や神経症候学など、診療する上で習得しなければならない共通の分野があります。しかし、それぞれの診療スタイルは、考慮する時間軸や患者数などの点で、大きな違いがあります。欧米に比べて、とくに地方都市で内科医(脳卒中内科医)の手による脳卒中診療が遅れることになった一因として、脳神経外科も含めてそれぞれの診療科の狭間の部分に脳卒中学が埋没してきたことが挙げられます。
 また、神経難病診療も地方都市では深刻な問題を抱えています。患者さんに対する医療支援体制が十分整っているとは言えません。近年のサイエンスの進歩は目覚ましく、今までほとんどわからなかった神経難病の原因が少しずつ解明され、僅かながらも新しい診断法や治療法が開発されてきました。神経内科医としては、一人でも多くの苦しんでいる神経難病の患者さんにその恩恵が施されるよう努力していかなければなりません。
 これからスタートする脳神経内科では、従来の枠組みを超えて、地域医療に貢献できる脳神経内科医(神経内科医と脳卒中内科医をまとめて)の育成、輩出を目指します。脳神経内科に興味を持つ若手医師を幅広く集め、個々の適性に合った育成システムを効率的に構築したいと考えています。そのためには、脳卒中以外も含めた脳神経外科とのハイブリッド診療の強化、さらには認知症における精神科との連携など、患者さんのニーズや時代の変化に対応できるようなフレキシブルで効率的な組織作りが必要であると思います。
 激動する日本の医療体制の中で、地方都市にある大学病院を取り巻く状況は大変厳しいものがあります。脳神経内科の初代教授として、私がやらなければならないことは、厳しくも絆と和を大切にして組織の力で人材育成に努めていくことだと考えています。時代を超えて、今も昔も求められる医師像は変わっていません。しかし、医師を取り巻く環境は激変しています。個々の適性を生かしつつ、学習しながら一緒に前に進んでいけるようなタフな組織をつくることが不可欠です。そこで、大切なことは、Motivation、Innovation、Teamwork(MIT)と考えています。みんながMotivationをもつこと。Innovation、新しいアイデアにチャレンジすること。そして、Teamworkを大切にすること。お互いの意見を尊重し信頼関係を築くためにコミュニケーションはかかせません。
 乱世の時代は無為自然、作為的なことをせずともすべてのことは為される。本来の意味からは少し離れますが、眼前にあることに目を背けず、自然な流れとして必要とされることをやれるような環境をつくることが理想であると考えています。そのためにも、先ず本物の臨床家を育てたいと思います。本物の臨床家は研究することを苦とせず、すばらしい研究者にもなれます。
 最後になりましたが、Act locally, Think globally. 長崎を世界へ、先人から引き継いできた志を持って、微力ながらも長崎大学病院の発展に貢献していきたいと思います。今後ともご指導・ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
ページのトップへ戻る