長崎大学と富士フイルム
AI技術を活用した術後遺残物確認支援の研究を推進

 長崎大学は富士フイルム株式会社(以下「富士フイルム」)と、AI技術※1を用いて術後の体内遺残物確認作業を支援する技術の共同研究を2019年12月より開始しています(研究代表者:医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科学 教授 江口 晋)。
 このたび、本共同研究の成果として、X線撮影装置で撮影したX線画像中のガーゼの陰影を認識できる見込みが立ちました。今秋、学会発表予定です。
※1 AI技術のひとつであるディープラーニングを設計に用いた。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。


腹部の術後X線画像から手術用ガーゼに織り込まれている造影糸を認識しマーキングした画像(イメージ)

共同研究の目的

近年、国内において術後体内にガーゼ、タオル、クリップ等の医療器具が遺残する医療事故が報告されています。体内の異物遺残は、合併症や感染等のリスクもある重大事故であることから、医療機関では遺残物の見落としを防ぐ仕組み作りを進めると共に、本対策をサポートする技術へのニーズが高まっています。 一般的に、リスク対策として、手術室内で使用できる移動型のX線撮影装置で撮影したX線画像を目視で確認し、遺残物の有無を確認しています。しかし、遺残物が骨と重なっている場合などは確認しづらく、遺残が発生してしまうことがあります。 本共同研究では、AI技術を活用することで外科医の術後X線画像の確認作業を支援し、ガーゼをはじめとする体内遺残物発生の低減を目指しています。

長崎大学病院の実績

長崎大学病院は年間約1万2千件の手術を実施しており、開腹を伴う術式も多く実施しています。外科手術の中でも特に肝胆膵外科では出血が多くなるため、使用するガーゼ等の医療器具も多くなる傾向があり、体内異物遺残防止対策を徹底的に行っています。当院で有する外科手術における豊富な知見や臨床ノウハウから、インシデント対策方法やX線画像を確認する際の注意点等の臨床課題を明確化し、本共同研究に活かしております。

富士フイルムのAI技術について

富士フイルムは、40年近くに亘るデジタルX線画像診断装置の開発経験の中で、画像認識技術の開発を推進しており、最近ではAI技術を活用して画像診断や撮影ワークフロー支援への活用を進めています。本共同研究ではAI技術の一つであるディープラーニングを用いて、手術中にX線撮影装置で撮影したX線撮影画像中にある、ガーゼをはじめとする遺残物を認識できる技術の確立を目指しています。


本共同研究では、今後も更なる外科医の作業負荷軽減や効率化のために術場支援ソリューションの研究を進めていきます。