新NICU・GCU運用
周産期担う人材を育成

 長崎大学病院は2019年度の総合周産期母子医療センター指定を目指す中、3月9日、NICU(新生児集中治療室)とGCU(回復治療室)を増床移設した。重症患児を診るための病床数確保と周産期医療に関わる医療人育成という2つの柱で、県内の周産期医療への貢献を目指す。また改修した施設は感染症対策に配慮しており、より安全な医療を提供する。ハイリスク分娩の可能性がある母と胎児を集中して管理できるMFICU(母体胎児集中治療室)は今秋に整備する予定。

◆医療資源不足に対応
 長崎大学病院は2009年に「地域型」として県の指定を受け、限られた医療資源(病床、医療人材など)でハイリスク分娩に対応してきた。県内全体の課題として①県全体のハイリスク分娩に関わるNICUのベッドが少なく、満床が常態化②周産期医療に関わる医療人材の不足などがある。周産期医療の課題を解決するため、長崎県とともに2014年から「総合型」を視野に入れた医療体制の整備に着手した。
 これまでの本院のNICUは6床、GCUは9床。県内4カ所の周産期母子医療センターNICU病床数の合計は出生1万人に対して24.5床(2015年出生数で算出)で、国が定める目標数(出生1万人対25〜30床)に届いていなかった。しかし今回、NICUを6床増床し12床、GCUもまた3床増やし12床整備したことによって、目標数を達成できる可能性が出てきた。第7次長崎県医療計画によると、2023年目標に出生1万人対30.3床を設定している。

◆人材育成を担う施設に
 教育病院である本院の使命の一つに医療人材の育成がある。周産期医療に関わる医療者は全国的にも減少傾向にある中、長崎県も例外ではない。重症患児の病床数を増やすとともに、長期ビジョンにおいて若手の人材を育成し、持続可能な医療体制の一助を担う。
 増﨑英明病院長は「県内の産婦人科の開業医も今や高齢化して、周産期医療に関わる若い医師が育たなければ、県内での正常なお産ですら厳しい状況になりかねない。本院を総合型の周産期母子医療センターにすることによって、若い医療者を集めることができると考えている」と話す。
 本院は県内で唯一、小児外科手術に対応できる医療機関であるため、外科手術を必要とする新生児の受け入れと治療を優先してきた。週数の早い低出生体重児の受け入れを他の母子医療センターに任せて、それぞれが役割分担している。一方で医療圏を超えて毎日母乳を届ける母親らの負担は大きかった。これからは32週未満の早産児をなるべく受け入れ、長崎医療圏内(長崎市、西海市、長与町、時津町)で産み育てていける体制を整えていく方針だ。

◆感染対策への配慮
 2015年、本院NICU、GCUで多剤耐性菌のアウトブレイクがあり、一時閉鎖した苦い経験がある。発症までは至らない保菌状態での観察がほとんどだったが、NICUの狭さが感染拡大の一つの要因とされた。そこで、新しい施設は感染症対策を考慮し、1病床あたりの床面積をNICU約10㎡、GCU約6㎡と広く設けた。NICU、GCUの合計面積は従来の約3倍を確保している。またベッドの区画の床の配色を変え、手指消毒などを意識するようゾーニングを徹底した。NICU奥の3部屋は壁で仕切り、万が一感染者が出た場合に備えて、本来の新生児治療を滞らせることなく対応できるよう整備している。全床に可動式の間仕切りを設置して患児やその家族のプライバシーにも配慮し、医療機器などをフルスペックで装備した。
 これで人材育成の場は整いつつある。今秋のMFICU開設、さらに総合周産期母子医療センター指定を目指し、周産期を担う医療者たちの表情に気合が入る。

(病院長企画室)