「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」を用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する特定臨床研究成果を発表

~免疫細胞pDC が維持され、ウイルスの早期減少、嗅覚・味覚障害の改善を確認~

国立大学法人長崎大学(学長 河野 茂、以下長崎大学)は、キリンホールディングス株式会社(社長磯崎 功典、以下キリン)が研究開発を行っている「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(以下プラズマ乳酸菌)」※1を用いた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する特定臨床研究成果を、4 月30 日(日)の第63 回日本呼吸器学会学術講演会で発表します。本特定臨床研究における知見は、長崎大学・キリン共同で特許出願を行っています。

※1 国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンターが所有するLactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805 のこと。

■新型コロナウイルス感染症の現状

新型コロナウイルス感染症は、2019 年12 月以降、パンデミックを繰り返し、全世界で6 億7,657 万人の感染者、688 万人の死者(2023 年3 月10 日(金)時点)を出しました。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はオミクロン株への変異以降、国内罹患者も増加し、身近な感染症となりました。ワクチンが普及し、罹患者の多くを軽症患者が占めるようになりましたが、重症化リスクを持たない軽症患者に使用が積極推奨されている薬物は限られており、対処療法が治療の中心となっています。※2 このため、新型コロナウイルスに対する有効性を兼ね備え、誰もが安全・手軽・簡単に服用できる治療法のニーズが高いと考えられます。

■プラズマ乳酸菌とは

プラズマ乳酸菌は、ウイルス感染防御を担う免疫系の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(以下pDC)を活性化する乳酸菌として、キリンが2010 年に発見しました。さまざまな研究を通して、高いウイルス感染防御機能があることが明らかになっており、インフルエンザウイルスやロタウイルス、デングウイルスなど各種ウイルスに対する臨床・非臨床での研究成果※3 も報告されています。このような科学的エビデンスを背景に、2020 年8 月にプラズマ乳酸菌を使用した商品が、免疫機能において日本で初めて※4機能性表示食品として届出を受理されました。


■特定臨床研究内容

長崎大学は、感染症学分野において日本を代表する卓越した研究成果を持つ研究機関として、キリンが積み重ねてきたプラズマ乳酸菌に関する研究成果から、プラズマ乳酸菌が新型コロナウイルス患者の発症予防効果および症状緩和に対して効果をもたらす可能性があると考え、2021 年12 月から長崎大学病院 呼吸器内科の山本和子講師(現:琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)教授)を中心に特定臨床研究に取り組んできました。本研究は、長崎大学病院を核として、複数の病院で実施する多施設共同試験で、新型コロナウイルス患者に対してプラズマ乳酸菌を含むハードカプセル4粒(プラズマ乳酸菌計約4,000 億個)、あるいはプラズマ乳酸菌を含まないハードカプセル4 粒(プラセボ)を、それぞれ50名に14 日間摂取いただき、その有効性・安全性を検証※5 するものです。



※2 COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 15.1 版 https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_230217.pdf
※3 免疫のひみつ -キリンの乳酸菌研究- https://health.kirin.co.jp/
※4 免疫機能の機能性表示食品として届出公表された日本初のブランド
※5 Yamamoto K, et al. BMJ Open 2022;12:e061172


■特定臨床研究成果

1、自覚症状総合点の変化量(主要評価項目)

7つの自覚症状 (咳、呼吸困難感、倦怠感、頭痛、嗅覚・味覚障害、食欲不振、胸部痛) の各項目を4段階(0:影響なし、1:ほとんど影響なし、2:影響あり、3:深刻な影響あり)で評価し総合スコアで解析した結果、両群間で差は認められませんでした。

2、味覚・嗅覚異常(副次評価項目)

自覚症状のうち、味覚・嗅覚異常においてそれぞれの群で0点を付けた(症状がないと回答した)患者の割合を解析した結果、9日目以降にプラズマ乳酸菌摂取群で症状がなくなった方の割合が増えることを確認しました。プラズマ乳酸菌を摂取することで、嗅覚・味覚異常の改善を早めることが示唆されました。


3、血中pDC存在比の変化率(副次評価項目)

プラズマ乳酸菌を含まないハードカプセルを摂取した群(プラセボ群)では新型コロナウイルス感染により血液中のpDCが大幅に減少する一方で、プラズマ乳酸菌摂取群では、血液中にpDCが維持されていることを確認しました。


4、新型コロナウイルス量の変化率(副次評価項目)

プラズマ乳酸菌摂取群では、投与4日目においてプラセボ群と比較して、新型コロナウイルス量の減少が大きくウイルス減少の速度を速めることが確認されました。


5、安全性・有害事象

今回の試験で、安全性が懸念されるような有害事象は認められませんでした。



今回の特定臨床研究では、主要評価項目である自覚症状総合スコアでは明らかな効果は示されませんでしたが、プラズマ乳酸菌の作用によってpDCが維持された結果、新型コロナウイルスが早期から減少し、嗅覚・味覚障害の早期回復につながっている可能性が示唆されました。


長崎大学、キリンは、プラズマ乳酸菌が新型コロナウイルス感染症に対する新たな予防、治療法の一つになることを期待しています。

プレスリリース



[記事:総務課(広報・評価)]