医学は、多岐にわたり、多くの研究を積み重ねながら進歩してきました。その中で、人を対象として行われる研究全般を臨床研究といい、病気の予防・診断・治療方法の改善や、病気の原因の解明・患者さんの生活の質の向上を目的として行われています。臨床研究のなかには薬の投与、手術、放射線治療など、人に対して変化を伴うことがあり、このような研究を「臨床試験」と言います。そのなかで、特に厚生労働省から薬・医療機器としての承認を得ることを目的として行う試験を「治験」といいます。
　臨床研究は研究者だけで行うものではありません。患者さんをはじめとする一般の方の協力が不可欠です。しかし、研究の場においては、一般の方はどうしても慣れないことが多く、弱い立場となりがちです。古くは、残念ながら一般の方が非倫理的な扱いを受けて研究が行われたことがありました。しかし、研究に参加・協力してくださる方は絶対的に守られなければなりません。そのような過去の反省から、1964年に医学研究者が自らを規制するために、倫理的原則を踏まえた「ヘルシンキ宣言」が採択されました。これは、いまでも世界の医療人の研究を行う際の重要な指針となっています。日本では、臨床研究法や多方面での倫理指針も整備されていて、これらを順守して研究を行うことで、一般の方々が安全に、安心・信頼のもと研究に参加していただけるようになっています。